催涙スプレーの催涙成分は数種類ありますが、効果の高さと安全性から現在ではほとんどの製品がOCとなっており、現在ではOC以外の催涙スプレーはほぼ皆無に等しいとされています。
日本護身用品協会は最も効果が高く確実かつ安全性が高いOCを推奨しています。
CNは効果と毒性に疑問が残りますので使用しないようにして下さい。CSガスは毒劇物取締法により一般・民間市場には一切流通していません。
以降は催涙スプレー市場のほとんどを占めるOCについて説明を続けます。
OCは唐辛子などから抽出された辛味成分です。OCを使用した催涙スプレーの効果の強さは、この辛味成分の強度によって決まります。
辛味成分は辛味の強さを絶対的な数値で表す事ができるため、それぞれの辛さを科学的かつ客観的に評価できます。辛味の強さを表す単位をSHU値といいます。
唐辛子属の植物の果実にはカプサイシンが含まれており、そのカプサイシンが神経抹消を刺激して辛さや痛みを感じさせます。
SHUはスコヴィル・ヒート・ユニット(Scoville Heat Units)の単位であり、唐辛子の辛さの度合いを数値化したものです。
SHU値は対象の辛味原料を砂糖水で何倍に薄めたら辛さを感じなくなるのかという倍数で表します。ピーマンが0(ゼロ)SHUであり、1000倍に薄めて辛さを感じなくなれば、その原料の辛さは1000 SHUとなります。身近な例では調味料のタバスコが2000 SHUなので、2000倍に希釈すると辛さを感じなくなります。これらの事からSHU値は数値が大きなほど辛い原料となります。
催涙液のOCは、唐辛子などから抽出された辛味成分を催涙効果に利用しているため、SHU値が催涙成分の強さの判断基準として利用できます。
催涙スプレーは軍事用の基準に沿って測定が行われます。測定結果の数値は軍事用として数値を簡略化するため食品用検査結果の10分の1で表します。食品用としての検査結果が200万SHUだった場合、軍事用の表現では20万SHUとなります。
辛さの感じ方には個人差や主観があるため、被験者での測定には大きな誤差が予想されます。従って、現在は高速液体クロマトグラフィーによりカプサイシンの量を直接量るジレット法によって測定しています。
催涙スプレーのOC強度測定は世界で唯一、AOACインターナショナル(アメリカの公認分析化学者協会:AOACI)による分析結果が認知されています。
催涙スプレーは原料となる高濃度の原液を溶剤で薄めた催涙溶液を噴射するため、測 定対象は溶剤で薄めた後の実際に噴射する溶液となります。催涙スプレーの性能表記 に原液のSHU 値を表示して販売を行う業者が見受けられますが、これは実際に使用する催涙液のSHUとはかけ離れたものであり、消費者に誤解を与えるため問題となっています。
OC催涙液は、原液を溶剤で薄めて使用します。催涙スプレーのボンベに封入されている催涙液は、溶剤で薄められた溶液です。水を主原料とした溶剤を使用したものが水性溶液であり、油を主原料とした溶剤を使用したものが油性溶液です。
名称 | 溶剤 | 除去性 | 症状緩和性 | 危険性 | 用途 |
---|---|---|---|---|---|
水性 | 水が主原料 | 洗い流す事が容易 | 水で薄められる | 安全性が高い | 対人、小・中型動物 |
油性 | 油が主原料 | 洗い流す事が困難 | 長時間付着部位に留まり強く作用 | 危険性が高い | 大型動物、猛獣用 ※人への使用は厳禁 |
水性は洗い流しやすく水で薄められるため対人用に使用されます。逆に油性は効果が早く洗い流しにくいた め付着部位に長時間留まり強力に作用します。
油性タイプは大型の熊や猛獣などどう猛性の高い動物に適しています。対人用の水性と大型動物用の油性では基本的な使用目的が異なり、製造方法も異なります。
催涙スプレーは使用する催涙液のSHU値と液体性質によって以下の通り分類されます。
通称 | SHU値 | 性質 | 使用対象 | 使用禁止対象 |
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ペッパースプレー | 20万以下 | 水性 | 人、ヒグマ以外の小・中型の熊、野犬、猪、猿などの動物 | ヒグマや大型の猛獣など |
熊よけ(ベアー)スプレー | 20万を超える | 油性 | エゾヒグマ(北海道以北)、グリズリー 種(大型熊)、ホッキョクグマ等 | 人や中・小型動物 |
催涙スプレーはその性質を十分に理解し、使用対象によって使い分ける必要があります。
適応対象とは異なる使用を行った場合、重大な事故に繋がる恐れがあります。
■出典:日本護身用品協会・公式トピックス[2012年9月13日付掲載]
熊よけスプレーの実態及び危険性の勧告